給料が少ないと言われる飲食店ですが、実際のところはどうなのでしょうか。
この記事では、飲食店の正社員の給料について、厚生労働省の資料を元にご紹介します。また、給料を上げる方法もご紹介します。
現在飲食店で働いている方は必見です。
飲食業界の平均月収
ここでは、飲食業界の給与事情について厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」を元に見ていきましょう。
飲食業界の平均月収は25万9千500円となっており、全16業種中最低となっています。
業種 | 平均月収 |
---|---|
宿泊・飲食サービス業 | 25万9千500円 |
鉱業・採石業・砂利採取業 | 36万6千700円 |
建設業 | 34万9千400円 |
製造業 | 30万6千円 |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 41万200円 |
情報通信業 | 38万1千200円 |
運輸業・郵便業 | 29万4千300円 |
卸売業・小売業 | 31万9千600円 |
金融業・保険業 | 39万3千400円 |
不動産業・物品賃貸業 | 34万800円 |
学術研究・専門・技術サービス業 | 39万6千600円 |
生活関連サービス業・娯楽業 | 27万8千700円 |
教育・学習支援業 | 37万7千200円 |
医療・福祉 | 29万8千円 |
複合サービス事業 | 30万2千円 |
サービス業(他に分類されないもの) | 28万5千700円 |
年齢別の平均月収
宿泊・飲食業界における年齢別の平均月収は以下の通りです。
〜19歳 | 18万8千700円 |
20〜24歳 | 20万6千500円 |
25〜29歳 | 23万円 |
30〜34歳 | 24万7千200円 |
35〜39歳 | 27万2千円 |
40〜44歳 | 28万3千700円 |
45〜49歳 | 28万8千400円 |
50〜54歳 | 29万3千200円 |
55〜59歳 | 28万9千100円 |
60〜64歳 | 25万1千400円 |
65〜69歳 | 22万3千300円 |
30代から40代になってくると、役職につくことも増えるため、平均給与も上がります。職場によっては60歳が定年のため、60歳をすぎると再雇用の人やアルバイト採用の人の比率が増え、平均月収が下がります。定年については、令和5年以降段階的に65歳に引き上げることが法令で定められているため、60歳〜64歳の平均給与は今後上がることが考えられます。
男女別の平均月収
全業種における男女別の平均月収です。全年齢を通して男性の方が女性よりも賃金が高くなっています。
業種によっては女性の多い一般職と男性の多い総合職で給与体系が異なっていたり、女性の方が非正規で働く比率が高かったりすることが原因とされています。
年齢層 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
〜19歳 | 19万1千100円 | 18万8千400円 |
20〜24歳 | 22万9千300円 | 21万9千600円 |
25〜29歳 | 26万7千800円 | 24万5千800円 |
30〜34歳 | 30万2千100円 | 25万9千600円 |
35〜39歳 | 33万7千900円 | 27万100円 |
40〜44歳 | 37万1千800円 | 27万6千800円 |
45〜49歳 | 39万6千900円 | 28万1千700円 |
50〜54歳 | 41万7千700円 | 28万5千900円 |
55〜59歳 | 42万7千400円 | 28万1千700円 |
60〜64歳 | 33万4千200円 | 24万6千600円 |
65〜69歳 | 29万3千300円 | 21万7千100円 |
飲食業界の給料が低いといわれる原因
全業種中で最低の宿泊・飲食業の平均賃金ですが、飲食業界の給料はなぜ低いのでしょうか。
離職率が高いから
ひとつめに考えられる理由は、離職率が高いから、です。令和5年雇用動向調査によると、宿泊・飲食サービス業の離職者数は1,422.7千人で離職率は26.6%と、産業計の15.4%に比べて非常に高くなっています。
離職の理由としては以下のようなものが挙げられます。
- 残業や夜間勤務・土日勤務が多い
- 教育制度が整備されていない
- 1人あたりの業務負荷が大きい
- 将来のキャリアを描けない
- 給与への不満
- 人間関係によるストレス
離職率が高いということは、また新たに人を雇わなくてはならないということです。あまり意識されませんが、人をひとり採用するとなると、求人情報の掲載料、採用業務や新人研修に当たる人材の確保などコストがかかります。これらのコストを利益の中から出さなくてはならず、結果として人件費に割ける予算が少なくなってしまいます。
人件費を削減したいから
ふたつめに考えられる理由は人件費を削減したいから、です。そもそも飲食業界は利益率が低いとされています。
人気店はブランディングに成功し、従業員に十分な給料を支払えるだけの利益が出ているかもしれません。
しかし、多くの飲食店は、生き残るための厳しい価格競争にさらされています。
お店の家賃、材料の仕入れなどの費用はある程度決まっていて、下げようがないため、人件費に割く費用を減らすということになりがちです。
飲食業界のキャリアプラン
飲食業界でのキャリアプランにはどのようなものがあるでしょうか。
調理スタッフのキャリアプランには次のようなものが考えられます。
- 調理スタッフ/平均月収 26~33万円
- 副調理長/平均月収30~42万円
- 調理長/平均月収30~42万円
- 本部職(メニュー開発など)/平均月収45~58万円
調理スタッフは食材の仕入れ・仕込みから調理までを担当します。調理の仕事は経験年数や、スキルによって担当する仕事も変わります。
最初は見習いとして働き、掃除や洗い場、食材の下処理や仕込みなどを担当します。働きながら仕事に関する知識をつけて調理技術を磨いていきます。その後担当の持ち場に配属され、調理を担当するようになります。
調理担当から副調理長・調理長になると、調理を担当するだけでなく調理場をうまく回すために人材を配置したり、調理スタッフのケアをすることも仕事になります。大手チェーン店の場合には、その後本部勤務になり、メニュー開発などに関わる可能性もあります。
ホールスタッフとして働く場合には、次のようなキャリアプランが考えられます。
- ホールスタッフ/平均月収26~33万円
- ホール責任者/平均月収26~33万円
- 副店長/平均月収30~35万円
- 店長/平均月収30~35万円
- SV/ 平均月収28~40万円
- 本部職/平均月収45~58万円
ホールスタッフの仕事内容は、飲食店での接客全般です。調理業務以外全てといってもよいでしょう。
開店前には店舗内の清掃やおしぼり・お箸・調味料等の準備やテーブルセッティングを行います。営業中は案内業務、オーダー取り、料理の提供、会計、見送りなどを店内の状況に気を配りながら行います。電話応対等も行います。閉店後には清掃やレジ締めなどの仕事があります。
ホール責任者になると、ホール担当者のシフト作りなど、ホールをうまく回すための業務も入ってきます。
副店長・店長になると、お店の運営に携わるようになり、経営者としての側面が大きくなってきます。大手チェーン店になると、働きが認められれば、SVや本部職としての道もあるでしょう。
参考記事:飲食店の求人の特徴と口コミ・評判
飲食業界で給料を上げる方法
飲食業界で給料を上げるにはどのような方法があるでしょうか。
規模が大きい飲食店で働く
同じ飲食店でも、中小企業や個人店よりも大規模に展開している店舗の方が給料が良いことが多いです。
実際、給料が低いと言われる飲食業界においても、上位にランクインするような大企業は福利厚生もきちんとしており、平均給与も高くなっています。「すき家」「なか卯」「ココス」などを運営するゼンショーHDの平均年収は647万円(2023年)、株式会社サイゼリヤの平均年収は660万円(2023年)、「磯丸水産」「サンジェルマン」などを運営する株式会社クリエイト・レストランツ・ホールディングスの平均年収は662万円(2023年)です。あくまでも「平均」給与なので、いますぐその金額になるわけではないですが、将来的な昇給は見込めるでしょう。
一方でチェーン店ではオペレーションが決まっており、個人の裁量で決められることはあまりありません。
複数の飲食店で労働条件を比較する
複数の飲食店で労働条件を比較し、より条件のいい方に就職するというのもひとつの方法です。比較することで、その職場が似たような業種の中でどの辺りの位置にいるのかを把握することができます。
労働条件を比較する際には給料の金額や休日の日数だけでなく、福利厚生にも注目しましょう。飲食店の中には「まかない」が出るところや、社員割引がきくところも多いです。まかないの質と金額によっては食費が浮くことになり、相対的に悪くない条件になる場合もあります。
さまざまな資格を取得する
さまざまな資格を取ることで、手当がつくことがあります。
例えばお酒を出すお店のホールで働くのであれば、次のような資格があると商品知識の豊かなスタッフがいる店として来店客にアピールできます。
- ソムリエ
- SAKE DIPLOMA
- きき酒師
- ビアソムリエ
- ウイスキー検定
- 日本ワイン検定
- テキーラ・マエストロ
また、食に関する資格には次のようなものもあります。
- チーズプロフェッショナル
- 野菜ソムリエ
- フードコーディネーター
- 管理栄養士
- 栄養士
キッチンで働くなら、次のような資格が有利になるでしょう。
- 調理師
- ふぐ調理師
- パティシエ
- 菓子製造技能士
- パン製造技能士
資格は、今の職場で給与アップを狙う場合にはもちろん、転職してキャリアアップする時にも役に立ちます。自分の仕事に活かせそうなものから取るとよいでしょう。
飲食店の経営者やオーナーを目指す
自分で飲食店の経営者になれば、年収は上がる傾向にあります。
ただし、飲食店の売上は社会情勢や流行、口コミなどに左右されやすいです。経営状態がいい時の恩恵は受けられますが、オーナーである以上赤字になった時の責任も負わなくてはならないことは頭に入れておきましょう。
飲食店に特化した転職エージェントに相談する
転職エージェントには総合型と専門型があります。dodaやリクルートエージェントのようにあらゆる業種を扱うのが総合型、itkのように「〇〇専門」と謳っているのが専門型です。
専門型の転職エージェントは、専門型である分業界とのつながりも深く、求人情報には出てこない裏事情も把握していることが多いです。また、非公開求人の情報を持っている転職エージェントも多いので、自分で転職先を探すよりも好条件の求人が見つかる可能性が高いです。
また、飲食店とのやりとりは基本的に転職エージェントの担当者がしてくれ、採用時には条件面の交渉をしてくれるケースもあります。
飲食店の経営者として給料を上げる方法
飲食店の経営者として給料を上げるにはどうすればいいでしょうか。
複数の店舗を経営する
複数の店舗を経営することで、売上高を伸ばすことができ、結果として経営者の給料も上がることになります。
全ての店舗に自分が常駐することは不可能なので、信頼できるスタッフが見つかるかどうかが鍵となります。
客単価を上げる
客単価が上がれば、同じ営業時間でも売上は増えます。
客単価を上げるには、メニューの見直しを行い料理をランクアップさせる、追加オーダーしやすいメニューを開発する、コースメニューを開発する、ホールスタッフからの声掛けで追加注文を促すなどがあります。
経費を削減する
経費を削減することでも、相対的に利益率は高くなるので経営者の給料が上がる可能性はあります。例えば複数の店舗を経営する場合には、ペーパーナプキンなどの消耗品は同一のものを使用し、大量発注することによってコストを下げられます。
ただし、ここで人件費をあまりにも削ってしまうといいスタッフが集まらない悪循環に陥ってしまいますので気をつけましょう。
マーケティング戦略を立てる
マーケティング戦略を立てましょう。近隣の人気店や競合店の研究をするのはもちろんのこと、チラシやクーポンを配布する、SNSで積極的に発信する、ネット予約を取り入れる、ポイントカードを発行するなど、集客率を高め、リピーターを増やすための施策をしましょう。
関連記事:飲食業界おすすめの転職エージェント10選!選ぶポイントや注意点を解説!
工夫次第で飲食店勤務でも給料は上げられる
飲食店の給料事情について見てきました。飲食店の給料が安いのは本当のことでしたが、それでも勤続年数が伸びればそれなりに給料は上がっていくこと、勤務先を選ぶことでも給料は上げられることなどがわかりました。
飲食店に勤めていて、現状に不満がある方は不満の理由を洗い出してみましょう。その結果、今の職場では改善が見込めないのであれば転職もひとつの選択肢です。
働きながら転職活動をするのであれば、飲食業界専門型転職エージェントを活用することをおすすめします。情報量も違いますし、適切なサポートを受けられます。
飲食の仕事は好きだけど、給料が…という人は、相談だけでもしてみてください。何かヒントが見つかるはずです。